コメカブログ

コメカ(TVOD/早春書店)のブログ。サブカルチャーや社会のことについて書いています。

STAY CLOSE

寒い日が続く。来週は更に強烈な寒波が来るらしい。暖かくしてなんとか乗り越えよう……。

早春書店はどうにか頑張って営業しております。寒いなか足を運んでくださるお客様に、本当に感謝。

 

最近の原稿仕事。

LINEのプラットフォームサイト『Article.』にて、平方イコルスンスペシャル」についての記事を書きました。とても面白い作品なので、オススメです。

article.me

 

 

Twitterサードパーティアプリを全面禁止にしたらしい。

www.techno-edge.net

十年以上にわたってクライアントアプリを開発し、ユーザーとの関係性を築き、ビジネスの基盤としてきたサードパーティ開発者の苦難は言うまでもありませんが、Twitterに残る社内エンジニアやプラットフォーム担当者の混乱も察するに余りあります。

ひどい話だ。イーロン・マスクは関係性や相互信頼を破壊してでもとにかく強引にマネタイズを成立させたいのだろうが、こんな展開で今後上手く行くとはとても思えない。

 


高橋幸宏が亡くなった。言うまでもなく自分は単なるいちリスナーに過ぎないわけだけど、悲しい。ポップミュージック……というか、ポップカルチャーに触れることには、やっぱりとても不思議なところがある。現実には一度も会ったことのないミュージシャンに対して、どうしてこんなに「親密さ」を、勝手に感じてしまうのか。

 

自分が彼の音楽を初めて意識的に聴いたのはたぶん1998年ごろ、14歳ぐらいのときだ。(広義の)テクノに関心を持つようになっていたタイミングで、ちょうどYMOのバック・カタログが紙ジャケで再発されたのだった。「SOLID STATE SURVIVOR」や「CAMOUFLAGE」等、UKニューウェイヴ色が強くてポップな高橋の楽曲は、20世紀末の中学生の耳にもとても魅力的に響いた。

 

ソロ名義の楽曲を初めてちゃんと聴いたのは、『Super Best Of YMO Personal Works』という、アルファ・ミュージックが乱発していたいい加減な内容のコンピレーションCDのひとつを買ったときだと思う(調べてみたら、1996年発売だったらしい。同じころに『SUPER BEST OF ALFA AMBIENT COLLECTION』という、これもまたテキトーな作りのコンピ盤が出てるんだけど、このCDでテストパターンとかインテリアといったYENレーベル所属バンドの音源を初めて聴くことができたので、正直恩恵を受けた)。「Drip Dry Eyes」「蜉蝣」といった楽曲のセンチメンタリズムに、強く感銘を受けた記憶がある。

 

高橋のような洗練された東京の「山の手」的スタイルというのは、自分のような郊外育ち(ぼくは埼玉の与野あたりで育った。だから「テクノポップ」においても、P-モデルやヒカシューあたりの感覚の方がしっくりくるのだ)の少年と親和性があるとは言い難いものだったと思う。しかし高橋らによって実行された(彼ら自身は「巻き込まれた」とも言える)「YMO」という記号化・キャラクター化のプロセスが、ぼくを含めた膨大なリスナーたちを地理も時間も超えて巻き込み、その人生を変えたのだ。高橋らの資質はデフォルメ・ポップ化されることで、信じられないぐらい遠くまで届く記号に変化した。そういう歴史に、自分はまず単純に感謝する気持ちがある。YMOテクノポップといった事象・概念が存在してくれたおかげで、自分の人生はとても楽しく面白くなったと思っている。「散開」の翌年に生まれた子どもでさえそうなったのであり、そしていま現在まだ子どもである彼ら彼女らのなかにも、YMOにリアルタイムで人生を変えられている人間は大量にいるだろう。本当にすごいことだ。ポップカルチャーは面白い。

 

自分はいま現在も、「テクノポップ」という考え方を延長・発展させる形でさまざまなものを楽しみ、考え続けているつもりだ。「(TVOD『ポスト・サブカル焼け跡派』も含めた)1980年代という時代の、自分なりの批判的な捉え返し」としての批評作業も、その一環であるつもりなのだ(だからそれはどうしても、自分にとっては「親殺し」的な作業にもなる)。

 

高橋幸宏さんのご冥福をお祈りします。これからも、勝手に「親密さ」を感じながら、あなたの音楽をずっと聴き続けたいと思います。